神戸大学 国際人間科学部
岸田広平 (Ph.D.) ホームページ
当研究室について
神戸大学 大学院人間発達環境学研究科
(人間発達専攻・心理系・臨床心理学コース)
神戸大学 国際人間科学部
(発達コミュニティ学科・心の探求プログラム)
岸田研究室
2025年4月、当研究室は神戸に発足しました。2025年度は教員1名と3回生4名で活動しています。当研究室では、メンタルヘルスの問題を抱える子どもたちとその家族が適切な心理社会的支援を受けられる社会の実現を目指して活動しています。具体的には、臨床児童心理学および子どもを対象とした認知行動療法について研究と実践を行っています。臨床児童心理学とは、子どもや家族の発達、および発達精神病理学の知見を基に、子どもの精神疾患や心理社会的問題の理解、予防、治療を目的とする心理学の一分野です。認知行動療法は、認知科学や行動科学の知見を臨床の諸問題に応用した心理療法の総称であり、科学的根拠に基づく理解と支援を重視します。当研究室では、科学者ー実践家モデル(サイエンティスト・プラクティショナーモデル)の理念を重視し、研究と臨床の両方を学ぶことを大切にしています。加えて、子ども・家族・学校に関する心理社会的支援の社会実装を目指し、共同研究やコミュニティでの活動にも積極的に取り組んでいます。

指導方針
当研究室では、臨床児童心理学や認知行動療法に関連する自らの研究テーマを自由に設定し、議論を通じて互いに学びを深めていきます。幼児、児童、青年を対象とした調査研究や介入研究に加え、保護者、教員、支援者を対象とした調査研究、介入研究、研修活動も実施しています。当研究室では、臨床現場や学校教育現場に積極的に足を運び、現場のニーズや実際の体験を通して学ぶことを重視しています。自ら研究のフィールドを開拓する力を養うとともに、現場での学びが研究や実践の質の向上に直結すると考えています。また、当研究室では、自らの研究テーマの社会的意義(その研究はなぜ社会に必要なのか)、臨床的示唆(その研究は現場でどのように役立つか)、学術的貢献(その研究は何が新しいのか)を説明できる力を養うことを目指しています。
【社会的意義】
当研究室では、研究活動を学問的探究や個人的な関心にとどめず、現代社会が抱える課題への具体的な貢献を目指すものと位置づけています。子どもや保護者をはじめ、教育・医療・福祉・地域など、心理的支援を必要とする現場は多様です。自らの研究テーマが、そのような社会の中でどのような役割を果たすのか、どのような人々の困りごとや課題の解決に資するのかを考え、社会的ニーズと接続する姿勢を重視します。言い換えれば、「どのような困りごとを持つ人々を対象とした研究なのか」という視点を明確にしながら、研究に取り組むことを期待しています。
【臨床的示唆】
研究成果が現場にとって有用となるためには、理論やデータの蓄積だけでなく、支援活動における具体的な応用可能性を見据えた考察が不可欠です。当研究室では、自らの研究が「どのように支援に役立つのか」「現場の支援に何を加えることができるのか」という問いに応えることを重視します。具体的には、「不安の高い子どもたちはどのような認知的特徴をもっているのか」や「怒りっぽい子どもに対してどのような親の養育行動が関連しているのか」などを明らかにします。それらの知見に基づいて、既存の支援方法の改善や、新たな支援方法の提案につながるような、実践的視点の育成を目指しています。
【学術的貢献】
当研究室では、臨床児童心理学や認知行動療法に関する先行研究が積み上げてきた研究知見を十分に調べることを大切にしています。そして、先行研究の知見を踏まえた上で、「自らの研究は何が新しいのか」「どのように学術的に意義があるのか」を語れる力の育成を目指します。個々の先行研究と自らの研究の違いだけではなく、研究テーマとして選ぶ領域全体を概観し、その上で自らの研究の位置づけを見出していくことを目指します。ただし、研究初期段階では、社会的意義や臨床的示唆を優先的に検討し、学術的貢献については研究を進めながら徐々に明らかにしていくという姿勢を大切にしています。
各段階の達成目標
当研究室では、学部生・大学院生が社会的意義・臨床的示唆・学術的貢献の3つの視点を、自ら研究テーマの探求を通して段階的に身につけられるよう指導することを目指しています。各段階での達成目標は、以下に整理して示します。また、修士課程および博士課程の大学院生には、研究テーマを「メインテーマ」と「サブテーマ」の二本立てで設定したり、共同研究に取り組んだりすることを推奨しています。領域・対象・手法・発想・文化などが異なるサブテーマを持つことや、共同研究に参加することを通して、研究や実践の視野を広げ、将来のキャリア選択の幅を広げることを目的としています。

研究テーマ
当研究室では、臨床児童心理学と認知行動療法に基づいて、子どもたちのメンタルヘルスの理解・予防・治療など多様なテーマに取り組んでいます。以下に卒業論文、修士論文、博士論文で想定される研究テーマの例を示しています。新たなテーマの提案も歓迎しています。なお、介入研究の実施を希望する場合には、フィールドの確保や研究計画の遂行に多くの時間と労力を要するため、大学院進学も視野に入れることを推奨しています。また、研究方法についてはデータを統計的に処理する量的研究を基本としていますが、仮説生成などが必要な場合には質的研究を併用することもあります。
【研究テーマの例】
例1:不登校の児童生徒の心理社会的特徴の検討
例2:小学生の怒りや反抗の発現維持悪化プロセスの検討
例3:親の養育行動やメンタルヘルスに関するオンライン調査
例4:子どもの認知行動的プロセスを測定する尺度の開発
例5:自己効力感向上のための学校ベースの心理教育プログラム
例6:中高生の抑うつ予防のための集団認知行動療法プログラム
例7:不安症と抑うつ症を持つ児童に対する診断横断的介入
例8:反抗挑発症の子どもに対するペアレントトレーニング
【推薦書籍】
臨床児童心理学や認知行動療法に関連する推薦書籍のリストを以下にまとめています。当研究室で実施する研究テーマや研究キーワードの選びの参考にしてください。
当研究室を ご志望の方へ
当研究室では、配属や進学を希望される方に向けて、研究室訪問を実施しています。研究テーマの指導可能性や研究室の雰囲気を直接感じていただく良い機会となりますので、ぜひご利用ください。当研究室では、公認心理師、スクールカウンセラー、日本学術振興会特別研究員(DC・PD)、研究職(博士後期課程、ポスドク、大学教員)を目指す人も歓迎します。また、神戸大学大学院人間発達環境学研究科では、春シーズンと秋シーズンに「オープンらぼ」を実施しています。オープンらぼでは、臨床心理学コースに関する合同でのオンライン説明会も実施しております。なお、オープンらぼ以外の期間においても、研究室訪問は随時実施しておりますので、ご希望の方はお気軽にご連絡ください。