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にげチャレ教室について

 にげチャレ教室(にげてしまって困っていることにチャレンジする教室)は、子どもの不安とうつに対する認知行動療法プログラムです (STREAM, Streamlined Transdiagnostic Intervention for Anxiety and Depression: Kishida et al., 2022)。にげチャレ教室では、心理教育、行動活性化、エクスポージャーの技法を用いて、回避行動の減少、快活動の増加、不安の順化という3つの作用機序を通じて、不安やうつの改善を目指します。不安(不安症)とうつ(抑うつ症)の両方の問題(診断)を扱うことができる診断横断的介入プログラムです。個別形式で実施するプログラムであり、全6回から構成されています(下図)。

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 にげチャレ教室では、子どもたちの回避行動の改善を目指しています。回避行動とは、嫌なことや不安なことなどを避けようとする行動や考えを指します(下図)。回避行動は、短期的には効果的なことが多いですが、回避行動が多すぎると、長期的には楽しい活動や本当はやりたいことができなくなって、日常生活において困ってしまいます。にげチャレ教室では、子どもたちの回避行動に対する理解を促すために、にげチャレンジャーというキャラクターを用いています(下図)。にげチャレ教室における回避行動には、行動的回避、認知的回避、能動的回避、受動的回避などの様々な回避行動が含まれます。それぞれの子どもにおいて特徴的な回避行動を同定し、回避場面(不安喚起場面)でのチャレンジを計画します。チャレンジを計画する際には、そのチャレンジを行うことにより、子どもにとっての楽しい活動が増えるような課題を設定します。そして、セッション内での回避場面(不安喚起場面)へのチャレンジを実施した後、日常生活場面での回避場面(不安喚起場面)へのチャレンジへと進んでいきます。

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 これまでの研究において、プログラムの開発 (岸田・石川, 2019)、フォローアップの有効性の検討 (岸田・石川, 2020)、ランダム化比較試験を用いた有効性の検討 (Kishida et al., 2022) などを実施してきました。ランダム化比較試験においては、不安症または抑うつ症を有する小学4年生から6年生の児童16名を介入群と待機群に割り当て、プログラムの有効性を検討しました (Kishida et al., 2022)。その結果、プログラム実施後および3ヵ月フォローアップにおいて、不安症や抑うつ症といった主診断の寛解率や、それらの診断の数に有意な改善が示唆されました。さらに、プログラム実施後および3ヵ月フォローアップにおいて、想定する作用機序である回避行動の減少や快活動の増加が確認されています(下図)。

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 にげチャレ教室に関する介入研究、および、子どもの不安とうつの維持悪化要因に関する基礎研究などの研究成果につきまして、以下の参考文献をご参照ください。

【参考文献】

  1. Kishida, K., Ishikawa, S., Ubara, A., Abe, N., & Arai, H. (2022). Transdiagnostic Behavioural Intervention for Children with Anxiety and Depressive Disorders: A Feasibility Study. Behaviour Change, 39, 235-246.

  2. 岸田 広平 (2022). 子どもの不安症と抑うつ障害に対する診断横断的介入. 風間書房. 

  3. 岸田 広平・石川 信一 (2020). 児童青年に対する診断横断的介入のフォローアップの有効性の予備的検討. 心理学研究, 91, 63-68.

  4. 岸田 広平・石川 信一 (2019). 児童青年の不安症と抑うつ障害に対する回避行動に焦点化した診断横断的介入プログラムの予備的試験. 認知行動療法研究, 45, 73-85.

  5. 岸田 広平・石川 信一 (2019). 子ども用快活動尺度の作成および信頼性と妥当性の検討. 認知行動療法研究, 45, 61-72.

  6. 岸田 広平・石川 信一 (2017). 児童における回避行動の頻度と機能に関する検討. 心理臨床科学, 7, 3-16.

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